和彫りの名品 解説
しょうぶかわこしさしたばこいれ
菖蒲革腰差煙草入れ
- 明治時代
- 豊川光長、野原貞明
- 清水三年坂美術館(京都)
胡麻竹を細かく裂いて木簡に貼り付けた上に染めた象牙やべっこうで蜘蛛をねらう蛙を写実的に表現している。野原貞明は石川光明に師事したが、作風としては旭玉山に近いものを感じる。作品が少なく、滅多に市場に出てこないまぼろしの名工の一人である。
※旭玉山 (あさひ・ぎょくざん)
「明治大正期の牙彫作家。江戸に生まれ、最初僧侶になったがのちに還俗して牙彫を志す。医師松本良順、田口和美について人体骨格を学び、髑髏を精巧に彫り出した作品で知られる。明治14(1881)年には、石川光明、島村俊明らと共に彫刻競技会(のちの東京彫工会)を結成し、近代牙彫の礎を築いた。(小松大秀)」出典:朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版
出典
骨薫 「緑青」 vol.36 粋な喫煙具
企画監修:村田 理如(清水三年坂美術館) 発行:マリア書房