和彫りの名品 解説
ぎんれんちもんけちみゃくばこ
銀蓮池文血脈箱
- 桃山時代 17世紀
- 高台寺(京都)
豊臣秀吉の正室お袮(ね)(北政所)は、夫の没後、慶長8年(1603年)11月3日に朝廷より高台院の院号を受け出家した。そして禅僧弓箴善彊(きゅうしんぜんきょう)が、同月8日付けで高台院に対し、嗣法したことを証した血脈を納めるのがこの箱である。
合口造で、蓋表、側面から外底に至る全面に、魚々子地に蓮池文を薄く字彫りし、丁寧な蹴彫りで線刻する。蓋表には、「血脉箱」の三文字を鍍金(ほとんど摩滅)で表す稜花形銘板を銀鋲で留めているが、蓋裏のちょうどこの位置にのみ、表と同じ蓮池文を表す。銘板の周縁には、桃山時代の標識的彫金表現である列点の唐草文が認められる。製作時期が慶長八年から高台寺創建の同十一年頃までにほぼ限定でき、しかも銀製で桃山時代としてはすこぶる精緻な彫金を施した稀有の作例である。
出典
特別展覧会 「金色のかざり」 金属工芸にみる日本美
解説:久保 智康 発行:京都国立博物館