和彫りの名品 解説

しょうちくまきえずしとびら こんどきくからくさもんかざりかなぐ

松竹蒔絵厨子扉 金銅菊唐草文飾金具付

  • 重要文化財
  • 桃山時代 16~17世紀
  • 高台寺(京都)

 高台寺霊屋の高台院(北政所)像を安置する厨子の扉である。扉の表裏には、松に篠竹を蒔絵で表しているが、その図様や技法を秀吉厨子扉や須弥壇(しゅみだん)の蒔絵と比較すると、意匠や技法が大きく異なり、短期間に大人数の分業によって製作されたという点からも、前者よりも新しく、霊屋が築造された慶長十一年(1606)から、高台院が亡くなる寛永元年(1624)までの間に製作されたと考えられている。
 飾金具は、秀吉厨子よりも大型の花先形金具を各所に打つ。表面には、魚々子地に菊唐草文を蹴彫りで表し、空間に大粒の露を散らす。なお蝶番金具と四隅の大型花先形金具では、先行きが大きく異なる。前者が秀吉厨子金具と近いタッチで唐草を太く表現した図様であるのに対し、後者は蹴彫りの勢いが強く、裏菊や側面菊、蕾なども含めて画面いっぱいに描く。両者を同一時期の工人差と見るか微妙な時間差と見るか断言しがたいが、高台院厨子の製作時のものと見ても差支えないであろう。
 四隅金具にひじょうに近い図様が、慶長十四年(1609)完成の宮城県・瑞巌寺本堂帳台構の飾金具をはじめ、いわゆる高台寺蒔絵の調度品に付く飾金具などに認められ、桃山時代後半期の典型的図様といえる。したがって高台寺厨子も、霊屋築造からさほど降らない慶長年間、遅くとも元和年間の初年ころまでに製作されたとみるべきであろう。
 いずれにしても、秀吉厨子と高台院厨子の飾金具は、桃山時代飾金具の微妙な新旧の作行きの違いを比較してみることのできるきわめて貴重な作品であることは間違いない。

出典
特別展覧会 「金色のかざり」 金属工芸にみる日本美
解説:久保 智康 発行:京都国立博物館

詳しい解説を閉じる

松竹蒔絵厨子扉 金銅菊唐草文飾金具付