魚々子地の作品
ししにぼたん うちだしじぼりななこじ
俄には江戸時代から和彫りの技術を受け継いできた家系の職人がいます。この作品は俄の和彫り職人の実祖父の作品です。
川の対岸で、小さな獅子を護るため、親獅子が威嚇している様子を表現しています。向かって左の獅子は、右の獅子より一回り大きく、毛並みも豊かに描かれていることから、恐らく雄獅子といえるでしょう。右の二匹は母子で胴体がややすっきり描かれているように思います。威嚇する獅子が、目を見開き、牙をむき出し、爪を立て今にも動き出しそうな様子は、地彫りで丁寧に立体感を出したからこそできる表現です。背景の牡丹の花びらのひとつひとつや、中央の水の流れをつくっているのも地彫りです。木の枝や獅子が立つ岩の表面にも彫りにより表面にテクスチャ―を出すことで、それが枝であり、岩であることが分かります。背面には全体に魚々子地を配しています。